観察シーズン

 シマフクロウは1つの川に1家族が暮らし、一生涯同じ場所で過ごします。 そのため一年中が観察シーズンであり、季節ごとにそれぞれ異なる家族の行動を観察することができます。

 雛は巣立った後、7-8ヶ月もの間両親と一緒に過ごし、独り立ちに必要な狩りの技術を習得します。 一年のほとんどの期間を子育てに費やすのがシマフクロウの特徴です。


2月 繁殖期の始まり

 2月に入るとオスとメスが絆を再確認するように、盛んに鳴き交わしを繰り返します。 オスがボウボウと2声で鳴くとメスがその後ろにウオーという低い声を繋げます。 オスとメスのデュエットが何時間もの間、凍った谷間に響き渡ります。 このデュエットが縄張りの標しとなり、他の個体の進入を防ぎます。 時には、オスからメスへ魚をプレゼントする様子を見ることがあります。  


3-4月 巣にこもっての抱卵と育雛

 2月末から3月始めに産卵すると、メスは巣にこもり、2ヶ月間ほとんど動かない状態が続きます。 この期間はオスだけが活動し、メスに餌を運びます。メスは代謝が減って餌を食べる量が減るため、一年中で一番観察回数が少なくなる時期です。 待ち時間は長くなりますが、雪解けの激流と共にシマフクロウを撮影できるのは、この時期しかありません。



5-7月 育ち盛りの雛に餌を運ぶ両親

 5月になると、雛がある程度大きくなり羽毛が揃ってくるため、メスは雛を暖める必要が無くなります。 雪解け水が落ち着き、川の魚を獲りやすくなる頃、メスが巣から出て自力で魚を獲るようになります。 この頃から、雛の食欲が増し、オスとメスが交互に餌を獲り雛に運ぶようになります。 シマフクロウの観察回数が増え、観察撮影にとても良い季節になります。 雛は5月下旬から6月初めころに巣立ちしますが、しばらくの間、巣のそばから離れません。

 

8-9月 動き回る雛

 7月末ころから雛は自力で飛べるようになり、親と共に行動するようになります。 一段と食欲が増し、両親は忙しく魚を獲り雛に運びます。 8月下旬、チトライ川にカラフトマスが上り始める頃、雛は観察小屋の前に姿を現します。 最初は木に止まっているだけですが、9月になると川に降りてくるようになります。 給餌池にやって来る回数が大幅に増加する時期です。

 

10-12月 一人前になるための修行期間

 川に降りて来るようになった雛は、親から狩りの手ほどきを受けます。 徐々に狩りの技術を習得し、しだいに自力で魚を獲ることができるようになります。 給餌池での滞在時間が一年で一番長くなり、シマフクロウ親子の複雑なやりとりが観察できる大変に興味深い時期になります。  



1月 子別れの季節

 次の繁殖期が始まる前の1月、ようやく一人前になった雛が、両親の縄張りから追い出されます。 通常は二度と両親の縄張りに戻ることはありません。 雛は、新たな縄張りを求めて彷徨うことになります。 シマフクロウの繁殖に適した川はわすかしかなく、既に大人のシマフクロウがそこに縄張りを構えているため、独り立ちした雛たちが生き残っていく事は容易ではありません。