シマフクロウ

 シマフクロウは翼長180cm前後の世界最大級のフクロウです。 魚を主食とし、水深が浅く流れが緩やかで冬に凍結しない川が必要です。そのため、北海道に約140羽しか生息できず、絶滅に最も近い種の1つになっています。

シマフクロウに必要な自然環境

 シマフクロウは魚を主食とし、人里近くの小川にやって来る鳥です。元来、ミズナラなどの大木の樹洞に巣を作りますが、巣箱や廃屋なども利用します。 1羽の雛を育て上げるのに1年で5000匹程度の魚を食べるため、通常、1つの川に1つの家族しか棲むことができません。

 シマフクロウは短い足を精一杯伸ばし、翼を持ち上げ、背伸びした状態で川に飛び込みます。 目視で魚を見つけて飛び込みますが、足が体の下に付いているため、魚を捕らえる瞬間は肝心の魚を見ることが出来ません。 おそらく足に魚が触る感触で捕らえるのでしょう。 水深が40cm程度より浅く、魚が見える程度に流れが弱く、しかし冬には凍結しない湧き水の豊富な川という難しい条件が必要です。 また、数千匹の魚が生息できる豊かな河川環境や、魚の餌を常に供給できる豊かな河畔林が不可欠です。

 知床でも、シマフクロウが子育てできる川は20本程度しかなく、それらの川には既にシマフクロウの夫婦が生息していて、寿命が30年程度と長いため、新しく生まれた子供たちが入り込む余地がほとんどありません。 川の数がシマフクロウの生息数を決めているのが現状です。

 

 

光を求めるシマフクロウ

 シマフクロウは夜行性の鳥ですが、全くの暗闇では物を見ることが出来ません。 シマフクロウが超高感度の目を持っていたとしても、光の弱い所では風景はザラザラのノイズだらけに見えてしまいます。 デジタルカメラでISO感度を上げるとノイズで写真がザラザラになるのと同じ理屈です。 それは、光の「粒子性」によるもので、避けることのできない物理学的限界です。

 シマフクロウは目視で魚を見つけて川に飛び込む生き物なので、できるだけ魚が見やすい時間帯と場所を選んで行動します。 朝と夕方の薄明かりの時間帯に活動的になる他、道路や橋、港の街灯、イカ釣りの漁火などをを積極的に利用します。 

 羅臼ではシマフクロウは川だけでなく、隣接する道路や港湾を鳴き交わしながら巡回します。 これは、道路、港湾が、シマフクロウにとって川と同様に重要な場所であることを示しています。  

 

 シマフクロウが活発に活動を始める夕暮れの明るさと、その1/36の明るさ(明るい月夜に相当)の時の川魚の見え方を比較しました。 シマフクロウがいくら感度の高い目を持っていたとしても、光の数が少ない闇夜では視界はザラザラに見えるだけで、魚を見つけるのは困難になります。 シマフクロウの狩りには、適切な明るさの光がどうしても必要なのです。